2003規格による雷保護

1.受雷部システムの種類と保護方法

受雷部システムの保護方法

  • 1.回転球体法
  • 2.保護角法
  • 3.メッシュ法

受雷部システムの種類

受雷部システムは、突針、水平導体、架空地線、メッシュ導体及び、構造体利用受雷部(金属管、階段、ガイドレール、ダクト等)を単独または組合せて施設し、その配置は選択したレベルが示す最小寸法に従い、回転球体法、保護角法及びメッシュ法を用いて建築物全体が保護される的確な位置を検討し決定します。
JIS A 4201:2003 では保護効率ごとにレベル分けされており、 建築物に合ったレベルの雷保護システムを敷設します。

保護レベルに応じた受雷部の配置

保護
レベル
回転
球体法
保護⾓法 メッシュ
法幅
20 30 45 60 60超過
α(°) α(°) α(°) α(°) α(°)
20 25 5
30 35 25 10
45 45 35 25 15
60 55 45 35 25 20
備考
1. Rは、回転球体法の球体半径。
2. Hは、地表面から受雷部の上端までの高さとする。 ただし、陸屋根の部分においては、hを陸屋根から受雷部の上端までの高さとすることができる。
※ 回転球体法及びメッシュ法だけを適用する。

1、回転球体法による保護

回転球体法の理論

  • 落雷現象は、まず雷雲に蓄電された雷電流がリーダ基点Aより大気
    の絶縁を破壊しながら大地に向かい降下します。
  • 雷雲に蓄電された電荷の容量によりステップトリーダ(先駆放電)
    の先端Bを中心とする雷撃距離(R)が決定し、球体の包絡面(球体表面)が形成される。
  • この包絡面と最初に接触した点に雷雲からの電路が形成されて雷電流が流れます。これが落雷現象となります。
Warning 包絡面と最初に接触する点が大地ではなく建物などである場合、建物は高圧の雷電流を受け、建物自体や屋内外の機器等が損傷 してしまいます。
理論に基づく
雷保護方法として
建物等に予め雷保護システムを施すことで落雷による雷電流を受雷部で受け止め、 引下げ導線を通じて接地極から安全に大地へ放電することで建物等を雷から守ります。
回転球体法の理論

回転球体法による建物の保護例

回転球体法による建物の保護例
保護レベル
回転球体法
半径R(m)
20 30 45 60
選択した保護レベルに応じた半径Rの球体面が、大地面と建物に接触する。建物に接触する点Aに受雷部システムを設置する。
建物接触点Aを基点に、半径Rの球体面が突針部Cの天端と接触するとき、点AとBを結ぶ球体面に接触しない部分が雷から保護されているとするものである。屋上床面及び屋上設備機器等が球体面に接触しないよう、避雷針の高さや数および設置位置を検討する必要がある。

2、保護角法による保護

保護角法による保護
保護角法
建築物高さ
(受雷部含む)
20m 30m 45m 60m 60m 
超過
保護
レベル
25°
35° 25°
45° 35° 25°
55° 45° 35° 25°
保護対象物が、保護レベルに応じた保護角度内に収まるよう、避雷針の高さや数を検討する必要がある。
※印となっている建築物においては、回転球体法もしくはメッシュ法による保護を適用する。

3、メッシュ法による保護

保護レベル
メッシュ法
メッシュ幅
(m)
5 10 15 20
メッシュ導体を施設した屋根面は保護されているものとし、 メッシュ導体より突起する被保護物については、保護角法又は回転球体法を組合せて保護する。 建物の側面部において回転球体法で保護できない部分には、垂直メッシュ導体を保護レベルに適合するメッシュ幅で施設して保護する。
メッシュ法による保護

受雷部システムの材料について

受雷部システムの材料最小寸法
保護レベル 材料 受雷部(㎟)
Ⅰ~Ⅳ 35
アルミニウム 70
50
雷保護システムにおける金属板又は金属管料の最小厚さ
保護レベル 材料 厚さ t
(mm)
厚さ t’
(mm)
Ⅰ~Ⅳ 5 0.5
アルミニウム 7 1.0
4 0.5
金属板が雷電流によって穴が開いてはならない構造の物、
 又は高温にさらされてはならないものである場合、その厚さは上表に示すtの値以上であること。
金属板が雷電流によって穴が開いても差し支えない構造の物、
 又は金属板の下部に着火する可燃物が無い場合、その厚さは上表に示す t’の値以上であること。

1992規格による雷保護

1.受雷部システムの種類と保護方法

突針による保護方法

a).突針による保護方法 空中に突出させた受雷部。

①.保護角度は 60°とする。
※消防法の定める危険物建屋においては、JIS A 4201:2003 保護レベルⅠを適用。

保護範囲(R)の算出】
保護範囲(R) = 保護レベルから突針先端までの高さ(h) × √3

突針による保護方法
b).棟上導体による保護方法 棟、パラペット又は屋根などの上に沿って設置した受雷部。
【例】鬼撚りアルミ線、鬼撚り銅線 等

①.建物の外周に沿ってループ状に配線する。
②.保護角度は 60°とする。
ループ状に設置された棟上導体においては、 内側に水平10mまで保護されるものとする。

棟上導体による保護方法
c).ケージによる保護方法 避雷を目的として被保護物全体を包む連続的な網状導体(金属板を含む)
【例】金属製タンク、航空障害灯用保護網 等

①.被保護物を包むように連続的な網状導体にする。
(金属板を含む)
②.ケージ幅2m以下とする。

ケージによる保護方法

避雷突針の材料について

銅(銅合金)、アルミ(アルミ合金)、溶融亜鉛めっき鉄の直径12mm以上の棒又は同等品

避雷導体の材料について

①.銅製・・・・・・・・30㎟以上(銅帯、銅棒、銅線等)
②.アルミ製・・・・・50㎟以上(アルミ帯、アルミ棒、アルミ線等)
※国宝などの重要な建築物の場合  銅製・・・50㎟以上、アルミ製・・・80㎟以上

建築部材を利用する場合の必要寸法

①.アルミ製・・・・・厚み 2t以上
②.鉄製・・・・・・・厚み 1t以上
③.銅製・・・・・・・厚み 0.8t以上
※ステンレス製については、規格上明記されていない。その為、一般には、鉄製と同等以上のものとしている。

離隔距離及び近接する金属体について

A)避雷導線は電力線、通信線又はガス管から1.5m以上離す。
B)避雷導線1.5m以内にある金属体には、14㎟以上の銅線又は、22㎟以上のアルミ線で接続する。
但し、次の場合を除く。
①.導体との間に、コンクリート壁又は、接地された金属体の遮蔽物がある場合。
②.1.5m以内の金属体が、鉄筋又は鉄骨に接続されている場合。