JIS Z 9290-3による雷保護

1.受雷部システムの種類と保護方法

受雷部システムの保護方法

  • 1.回転球体法
  • 2.保護角法
  • 3.メッシュ法

受雷部システムの種類

受雷部システムは、突針、水平導体、架空地線、メッシュ導体及び、構造体利用受雷部(金属管、階段、ガイドレール、ダクト等)を単独または組合せて施設し、その配置は選択した保護クラスが示す最小寸法に従い、回転球体法、保護角法及びメッシュ法を用いて建築物全体が保護される的確な位置を検討し決定します。
JIS A 4201:2003 では保護効率ごとにレベル分けされており、 建築物に合ったレベルの雷保護システムを敷設します。

保護クラスに応じた受雷部の配置

保護
クラス
回転
球体法
半径R(m)
保護⾓法 メッシュ法
幅(m)
2〜20m 21〜30m 31〜45m 46〜60m 60m〜
20 70°〜23° 5×5
30 74°〜37° 35°〜23° 10×10
45 77°〜48° 46°〜37° 36°〜23° 15×15
60 78°〜53° 53°〜45° 44°〜33° 33°〜23° 20×20
保護角法は保護クラス(Ⅰ〜Ⅳ)や受雷部の高さ(2m〜60m)により規定されており、対応する保護角度を用いて対象を保護する。
*印は回転球体法またはメッシュ法のみを適用する。

1、回転球体法による保護

回転球体法の理論

  • 落雷現象は、まず雷雲に蓄電された雷電流がリーダ基点Aより大気
    の絶縁を破壊しながら大地に向かい降下します。
  • 雷雲に蓄電された電荷の容量によりステップトリーダ(先駆放電)
    の先端Bを中心とする雷撃距離(R)が決定し、球体の包絡面(球体表面)が形成される。
  • この包絡面と最初に接触した点に雷雲からの電路が形成されて雷電流が流れます。これが落雷現象となります。
Warning 包絡面と最初に接触する点が大地ではなく建物などである場合、建物は高圧の雷電流を受け、建物自体や屋内外の機器等が損傷してしまいます。
理論に基づく
雷保護方法として
建物等に予め雷保護システムを施すことで落雷による雷電流を受雷部で受け止め、 引下げ導線を通じて接地極から安全に大地へ放電することで建物等を雷から守ります。
回転球体法の理論

回転球体法による建物の保護例

回転球体法による建物の保護例
保護クラス
回転球体法
半径R(m)
20 30 45 60
選択した保護クラスに応じた半径Rの球体面が、大地面と建物に接触する。建物に接触する点Aに受雷部システムを設置する。
建物接触点Aを基点に、半径Rの球体面が突針部Cの天端と接触するとき、点AとBを結ぶ球体面に接触しない部分が雷から保護されているとするものである。屋上床面及び屋上設備機器等が球体面に接触しないよう、避雷針の高さや数および設置位置を検討する必要がある。

2、保護角法による保護

保護角法による保護
保護角法
建築物高さ
(受雷部含む)
2〜
20m
21〜
30m
31〜
45m
46〜
60m
60m〜
保護
クラス
70〜23°
74〜37° 35〜23°
77〜48° 46〜37° 36〜23°
78〜53° 53〜45° 44〜33° 33〜23°
保護対象物が、保護クラスに応じた保護角度内に収まるよう、避雷針の高さや数を検討する必要がある。

3、メッシュ法による保護

保護クラス
メッシュ法
メッシュ幅
(m)
5×5 10×10 15×15 20×20
メッシュ導体を施設した屋根面は保護されているものとし、メッシュ導体より突起する被保護物については、保護角法又は回転球体法を組合せて保護する。建物の側面部において回転球体法で保護できない部分には、垂直メッシュ導体を保護クラスに適合するメッシュ幅で施設して保護する。
メッシュ法による保護

4、高層ビルにおける落雷対策

  1. ①60m以下の建築物では、建物側面の受雷部は不要
  2. ②60m以上の建築物では、建物の上部から20%を保護すること。
    →高さの上方20%のみ建物側面の受雷部設置が必要
高層ビルにおける落雷対策

受雷部システムの材料について

受雷部導体及び突針の材料、形状及び最小断面積
機械的ストレスがない場合では、受雷部胴体の銅及びすずめっき銅の場合、棒及びより線は50㎟(銅棒は直径8㎜)を25㎟(銅棒は直径5.8㎜)に低減できる。この場合、取付け部材の間隔の縮小を考慮することが望ましい。
材料 形状 最小断面積(㎟)

すずめっき銅
帯、管 50
50
より線 50
棒(突針) 176
アルミニウム 板、帯、管 70
50
より線 50
アルミニウム合金 板、帯、管 50
50
より線 50
棒(突針) 176
銅被覆アルミニウム合金 50
溶融亜鉛めっき鋼 板、帯、管 50
50
より線 50
棒(突針) 176
銅被覆鋼 50
板、帯、管 50
ステンレス鋼 板、帯、管 50
50
より線 70
棒(突針) 176
雷電部システムにおける金属板又は金属管料の最小値
注)t:開孔を避ける。
t’:開孔、局所過熱又発火が問題とならない金属板だけに適用する。
LPSのクラス 材料 厚さ t
(mm)
厚さ t’
(mm)
Ⅰ~Ⅳ - 2.0

(ステンレス、亜鉛メッキ鋼)
4 0.5
チタニウム 4 0.5
5 0.5
アルミニウム 7 0.65
亜鉛 - 0.7